目次
- 統計が示す初めての26万円台到達
- 引き上げ企業が過去最多に達した背景
- 学生側の期待と市場のギャップ
- 初任給だけでは測れない生涯収入
- まとめ
統計が示す初めての26万円台到達
賃金構造基本統計調査によると、2025年の大学卒新規学卒者の所定内給与(月額)は262.3千円で前年比5.6%増、初めて26万円台に達した。高卒は207.3千円、大学院卒は299.0千円であり、一般労働者全体の平均340.6千円に対して大卒は77%程度からスタートする構造である。
出典: 厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査の概況』p.16(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/14.pdf, 閲覧日2026-08-22)
注目すべきは上昇ペースの加速だ。人事戦略研究所の分析では、大卒1000人以上規模の初任給は2016年の219.9千円から273.4千円へ10年間で53.5千円上昇し、直近5年の伸び幅は前半5年の約4倍に相当する。企業規模差も拡大し、1000人以上と10〜99人の差は13.0千円から31.0千円へ約2.4倍になった。| 学歴 | 初任給(所定内・月額) |
|---|
| 高校卒 | 207.3千円 |
| 専門学校卒 | 230.7千円 |
| 高専・短大卒 | 235.5千円 |
| 大学卒 | 262.3千円 |
| 大学院卒 | 299.0千円 |

引き上げ企業が過去最多に達した背景
産労総合研究所『2026年度決定初任給調査』では、初任給を引き上げた企業が77.9%となり、1997年度以降の調査で最高を記録した。理由の首位は「人材を確保するため」71.2%、次いで「在籍者のベースアップがあったため」44.1%であり、採用競争と既存社員とのバランス調整が同時に進んでいる。中堅企業では91.0%、中小企業でも63.2%が引き上げた。
出典: 株式会社産労総合研究所『2026年度 決定初任給調査』p.1(https://www.sanro.co.jp/news/n127059.html, 閲覧日2026-08-22)
決定額でも大卒一律25万880円(4.86%増)、高卒21万1814円(6.56%増)と伸び率は5%前後を維持した。背景には春闘の高水準があり、連合の最終集計では2026年春闘の賃上げ率は5.01%で3年連続の5%超えとなった。公務員側でも人事院勧告により国家公務員総合職の初任給が諸手当込みで30万円を超え、民間比較対象を1000人以上企業へ変更するなど、初任給インフレは制度横断的な現象になっている。出典: 日本労働組合総連合会(連合)2026年春闘最終集計 p.1(https://www.47news.jp/14568788.html, 閲覧日2026-08-22)

学生側の期待と市場のギャップ
学生側の意識も変化している。株式会社学情の調査では、初任給の高い企業について志望度が上がると答えた26卒生は86.3%、就職において初任給を重視するとした人は81.9%に達した。マイナビの内定者調査では入社予定先の平均初任給は274,510円で、満足している学生は76.8%である。
出典: 株式会社学情「初任給に関するアンケート」p.1(https://service.gakujo.ne.jp/wp-content/uploads/2024/07/240719-navienq.pdf, 閲覧日2026-08-22)
ただし上位の数字には注意が要る。東洋経済『就職四季報』の初任給ランキング首位サイバーエージェントの42万円には時間外80時間相当のみなし残業代が含まれ、東京海上日動の最大41万円も転居転勤同意が条件である。専門家知見として帝国データバンクの初任給アンケートでは、引き上げ企業は67.5%と過半を占める一方、防衛的な賃上げの限界に近付く企業の二極化を指摘しており、提示額の内訳確認は必須の手順といえる。出典: 東洋経済新報社『就職四季報プラスワン』「初任給が高い100社ランキング」p.1(https://toyokeizai.net/articles/-/852447, 閲覧日2026-08-22)

初任給だけでは測れない生涯収入
初任給の上昇は名目値である。厚生労働省の毎月勤労統計では2025年度の実質賃金は前年度比0.5%減で、マイナスが4年連続となっている。物価上昇が賃金上昇を上回る限り、初任給26万円台の購買力は過去の26万円台とは異なる。採用充足率が69.7%と過去最低を更新する売り手市場であることも、初任給競争を一段と強めた要因である。
出典: 厚生労働省 毎月勤労統計調査2025年度確報(時事通信報道)p.1(https://sp.m.jiji.com/article/show/3781269, 閲覧日2026-08-22)
個人側の判断軸は3つある。(1)初任給ではなく30歳・40歳の到達水準と昇給曲線を確認する。(2)みなし残業時間と手取り換算で時間単価を試算する。(3)賞与比率と業績連動性を含めた年収総額で比較する。初任給はキャリアの出発点であり、生涯収入を決めるのはその後の評価制度と転職判断である。まとめ
大卒初任給の26万円台到達は、10年間で24.3%上昇という構造的な賃上げの帰結であり、引き上げ企業が77.9%に達した事実は市場全体の転換点を示す。一方で実質賃金は4年連続マイナス、上位企業の提示額には残業代込みや条件付きという留保がある。数字の水準だけでなく、内訳とその後の伸びを合わせて読むことが、新卒・第二新卒双方にとって重要になる。
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