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上場企業平均年収692.6万円を読み解く|数字の見方と落とし穴

公開日
2026年7月31日
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年収データ転職判断統計リテラシー
この記事のまとめ

上場約3700社の平均年間給与は692.6万円(2025年度決算、帝国データバンク集計)で5年連続上昇・過去最高を更新した。ただし中央値は661.6万円であり、単体ベース開示という性質上、持株会社や高年齢構成の企業ほど実感から乖離する。全国の給与所得者平均478万円との差を読み替える視点が転職判断では重要になる。

目次

  1. 過去最高692.6万円の中身を分解する
  2. 全国平均との差が示す上場企業の位置
  3. ランキングで誤読しがちな3つの罠
  4. 二極化時代の個人側の判断材料
  5. まとめ

過去最高692.6万円の中身を分解する

帝国データバンクが有価証券報告書に「平均年間給与」の記載がある上場約3700社を対象に行った調査によると、2025年度決算の平均年間給与は692.6万円だった。前年度671.1万円から21.5万円増(3.2%増)で、データのある2003年度以降で最高を更新し、月換算で約1.8万円の増加である。前年度から給与が「増加」した企業は76.8%に達した。

出典: 株式会社帝国データバンク『上場企業の「平均年間給与」動向調査(2025年度決算)』p.1〜4(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260709-annualincome25fy/, 閲覧日2026-08-22)
分布を見ると、最も多いのは600万円台の939社(25.6%)、次いで500万台850社(23.1%)、700万台677社(18.4%)であり、1000万円以上は235社・6.4%と初めて200社を超えた。一方で500万円未満は430社・11.7%あり、「500万円台以下」は34.8%を占める。市場別では東証プライム793.2万円、グロース648万円、スタンダード615.6万円で、プライムと他市場の差は約145〜178万円開いている。市場別の平均年収

全国平均との差が示す上場企業の位置

国税庁『令和6年分民間給与実態統計調査』では、1年を通じて勤務した給与所得者5137万人の平均給与は478万円、正社員は545万円、正社員以外は206万円である。男女別では男性587万円・女性333万円だ。つまり上場企業平均692.6万円は、非正規を含む全国平均より214.6万円高い水準にある。

出典: 国税庁『令和6年分 民間給与実態統計調査』概要p.1(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2024.htm, 閲覧日2026-08-22)
厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』でも一般労働者の所定内給与は33万400円(前年比3.8%増)と過去最高の伸び率を記録しており、賃上げの波が広範囲に及んでいる。ただし上場企業の数値には賞与・残業代込みという前提があり、額面の年収に近い指標として扱う必要がある。平均給与の三層比較

出典: 厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況』p.6(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html, 閲覧日2026-08-22)

ランキングで誤読しがちな3つの罠

第一の罠は単体ベースの開示である。有価証券報告書の「従業員の状況」は提出会社単体の数値であり、純粋持株会社では本社少数の管理部門社員だけが平均に含まれる。アサヒグループHDのように連結従業員約3万人に対し単体155人程度の企業では、単体の高額な平均をグループ実態と同一視できない。

第二の罠は平均年齢の未補正である。平均年齢42歳で700万円の会社と、33歳で650万円の会社では昇給ペースの含意が異なる。第三の罠は業種差で、業種別上位は海運1120.1万円(唯一の1000万円超)、証券962.1万円、保険936万円、鉱業911.7万円が並び、小売業574万円とは2倍近い差がある。業種別の平均年収上位

出典: 年収データベース編集部「有価証券報告書から企業の平均年収を読み解く方法」p.1(https://radineer.asia/income/blog/kigyou-nenshu-mikata, 閲覧日2026-08-22)
中央値661.6万円が平均を31万円下回る事実も、一部の高額給与企業が平均を押し上げていることを示している。OECDの平均年間賃金(USD PPP)で日本は49,446ドルと34カ国中25位にとどまる点も併せて押さえたい。

出典: OECD「Average Annual Wages 2024」(USD PPP)(https://data-explorer.oecd.org/, 閲覧日2026-08-22)

二極化時代の個人側の判断材料

賃上げの内実にも偏りがある。2025年の平均賃上げ率5.52%(妥結額ベース)を上回る上場企業は952社・25.9%にとどまり、初任給引き上げ企業は89.1%(マイナビ調査)と採用競争が初任給インフレを招いた半面、40〜50代を対象とする「黒字リストラ」が2024年度以降目立ち始めたと帝国データバンクは分析する。専門家知見として同調査は「評価・報酬制度の再設計の必要性が問われる局面」と総括しており、人事側の設計変更が進行中である。

出典: 株式会社マイナビ「2027年卒 企業新卒採用活動調査」p.1(https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260722_112587/, 閲覧日2026-08-22)
出典: AERA DIGITAL「業績がいいのに削減 なぜ大企業で黒字リストラが増えているのか」p.1(https://dot.asahi.com/articles/-/283738?page=1, 閲覧日2026-08-22)
転職者側の実務的な手順は次の3点に要約できる。(1)候補企業の有報で平均年収・平均年齢・平均勤続年数をセット確認する。(2)単体従業員数と連結従業員数の差から持株会社かどうか判定する。(3)同じ業種内での順位と、賞与比率・残業想定時間を含めた総額で比較する。この補正を経て初めて、692.6万円というマクロ数値は個人の意思決定に使える基準線になる。

まとめ

上場企業平均年収692.6万円は過去最高を更新した確かな事実だが、中央値661.6万円、500万円台以下が34.8%、単体ベース開示という条件付きである。全国平均478万円との214.6万円の差は上場企業の位置を示す一方、業種・市場・年齢構成で大きく開く。数字そのものではなく、補正して読む習慣が転職判断の精度を決める。

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