目次
- 業種間に開く賞与の約10倍格差
- 大手企業の一時金が過去最高を更新
- 少ない側の構造的理由を分解する
- 転職判断に落とし込む3つの視点
- まとめ
業種間に開く賞与の約10倍格差
厚生労働省『毎月勤労統計調査』の令和7年年末賞与特別集計によると、事業所規模5人以上の労働者1人当たり平均支給額は42万4,889円(前年比2.8%増)である。ただしこれは全業種を束ねた平均で、業種別に見ると構造が一変する。
出典: 厚生労働省『毎月勤労統計調査』令和7年年末賞与特別集計(LIMO加工)p.1(https://limo.media/articles/-/122240, 閲覧日2026-08-22)
電気・ガス業は94万1,438円(月給の1.86カ月分)、情報通信業74万6,758円に対し、生活関連サービス業19万4,018円、飲食サービス業は9万551円(0.46カ月分)である。上位と最下位の差は約10倍であり、JILPT『ビジネス・レーバー・トレンド』の分析でも、2025年夏季賞与は支給事業所平均42万6,337円(+2.9%)ながら「生活関連サービス」「運輸」「卸売・小売」が減少したと指摘される。出典: 労働政策研究・研修機構(JILPT)『ビジネス・レーバー・トレンド ちょっと気になるデータ』p.1(https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2026/01_02/c_01.html, 閲覧日2026-08-22)
国税庁の民間給与統計も同方向を示す。平均給与が最も高い電気・ガス・水道業832万円は基本給659万円に賞与173万円を上乗せした構成であり、宿泊・飲食サービス業279万円は賞与30万円未満という対照的な内訳である。
大手企業の一時金が過去最高を更新
日本経済組合連合会(経団連)の2026年夏季賞与最終集計では、従業員500人以上の大手163社の組合員平均妥結額は104万2,537円(前年比7.04%増)で、1981年以降の集計方式で過去最高を更新した。建設は202万6,633円と全業種で初めて200万円を超え、製造業109万3,629円、非製造業94万1,145円が続く。
出典: 日本経済組合連合会(経団連)『2026年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況』p.1(https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2026/0709_08.html, 閲覧日2026-08-22)
個社では半導体製造装置のディスコ495万4,410円が首位となった。ただしこの高水準は大企業限定であり、帝国データバンクのアンケートでは正社員1人当たり平均47.7万円、「増加する」企業37.1%に対し小規模企業31.4%と大企業44.4%の差が13ポイントに拡大している。公務員側でも国家公務員一般行政職の夏の期末・勤勉手当は73万8,500円(+4.5%、4年連続増)、東京都職員は109万3,854円であり、民間主要企業並みの水準に達している。出典: 株式会社帝国データバンク『2026年夏季賞与の動向アンケート』p.1(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260611-2026summerbonus/, 閲覧日2026-08-22)

少ない側の構造的理由を分解する
賞与が薄い業界には共通の構造がある。第一に非正規比率である。観光文化資源活用機構の原忠之氏による専門家知見の分析では、宿泊飲食サービス業の雇用者330万人中63.6%が女性で、非正規雇用の割合が高いことが平均年収を14産業中最下位へ押し下げているとされる。第二に人件費率の高さであり、労働集約型の業界では利益率が薄く賞与原資を確保しにくい。第三に景気感応度で、卸売・小売や運輸は消費変動が直接一時金に反映されやすい。
出典: 一般財団法人観光文化資源活用機構(JTB)「宿泊産業の構造的低賃金問題からの脱却戦略について」p.1〜2(https://www.jtb.or.jp/tourism-culture/bunka263/263-09/, 閲覧日2026-08-22)
個人単位の実態も併記しておきたい。dodaのボーナス調査(n=15,000)では、年間平均支給額120.7万円のうち企業規模別は小企業71.1万円、中企業115.3万円、大企業163.6万円であり、同じ職種でも所属規模で2倍以上開く。職種別では法務・知的財産217.5万円、MR209.4万円が上位で、商社ではボーナス年額1000万円超の企業も存在する。出典: パーソルキャリア(doda)『ボーナス平均支給額の実態調査【最新版】』p.1(https://doda.jp/guide/bonus/, 閲覧日2026-08-22)

転職判断に落とし込む3つの視点
賞与を見る際の実務的な軸は次の3点である。(1)支給月数ではなく固定額と業績連動部分を分けて確認する。中小総研の調査では制度上「年2回支給」が66.8%だが、実際は決算賞与を含む年3回以上が17.8%あり制度と実績の乖離もある。(2)求人票の想定賞与が基本給の何カ月分か、直近3年の実績推移を有価証券報告書で裏取る。(3)業界の利益率と価格転嫁力を確認する。賞与は会社の将来見通しを映す鏡であり、好調期の一時金だけを見て移籍すると減額リスクを抱えやすい。
出典: 中小企業総合研究所『2026年夏季賞与支給に関する実態調査』n=2,712 p.16〜18(https://www.fmltd.co.jp/wp/wp-content/uploads/2026/07/20260729.pdf, 閲覧日2026-08-22)
東洋経済『就職四季報』のボーナス年額ランキングでは総合商社が上位を独占する一方、回答平均は約120万円程度であり、ランキング上位は分布の右端にすぎない。自分の候補企業が分布のどの位置にあるかを確認することが重要である。まとめ
賞与の多寡は、業種の付加価値構造と企業規模によってほぼ決まる。電気ガス94万円対飲食9万円という年末賞与の10倍格差、大手一時金104万円の過去最高更新と全体平均47.7万円の落差がその証左である。転職では「業界の賞与体質」と「企業規模」の2軸で候補を選び、実績値で裏取ることが損しない判断につながる。
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