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固定残業代の正しい読み方とは?計算と違法サインの見抜き方

公開日
2026年7月25日
読了時間
読了 6分
固定残業代労働法統計リテラシー
この記事のまとめ

ハローワークに寄せられる求人票と実際の労働条件の相違に関する苦情で最多なのが「賃金に関すること(固定残業代を含む)」である。厚労省通達は固定残業代を「一定時間分の時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金として定額で支払われる賃金」と定め、基本給の額・時間数と金額・超過分別途支払いの3項目明示を義務づける。月給30万円の試算では法定単価1953円に対し実支は1667円で、毎月約8580円の不足も生じうる。

目次

  1. 固定残業代とは何かを定義から押さえる
  2. 求人票で確認すべき3つの記載項目
  3. 逆算検証で割増単価をチェックする
  4. 違法になる4つのパターンと判例基準
  5. まとめ

固定残業代とは何かを定義から押さえる

固定残業代(みなし残業代)は、実際の残業時間に関係なく一定時間分の残業代を毎月定額で支払う制度である。厚生労働省の2017年7月31日付通達は、これを一定時間分の時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金として定額で支払われる賃金と定義し、「月の残業代は5万円」という時間数なしの定めは固定残業代と認められないとしている。制度自体は適法だが、導入企業の大半が適法運用できていないと専門家から指摘されており、人事・労務実務でも確認項目が定番化している。

問題の多さは統計でも裏づく。厚労省職業安定局の調査では、ハローワークにおける求人票記載内容と実際の労働条件の相違に関する申出・苦情の最多が「賃金に関すること(固定残業代を含む)」だった。東京都産業労働局『労働時間管理に関する実態調査』でも正社員の24.3%が残業代を全額支給されておらず、その理由の首位は「基本給に含まれているため」25.2%、次いで「職場の雰囲気で全額を申請しにくいため」21.3%、「定額で支給されているため」15.9%という内訳である。

出典: 厚生労働省「固定残業代について」/東京都産業労働局『労働時間管理に関する実態調査』概要版 p.14(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000184068.pdf, 閲覧日2026-08-22)
残業代が全額支給されない理由

求人票で確認すべき3つの記載項目

若者雇用促進法指針および職業安定法のルールでは、固定残業代を賃金に含める場合、募集段階で次の3点すべての明示が求められる。(1)固定残業代を除いた基本給の額、(2)固定残業時間数と金額等の計算方法、(3)固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働について割増賃金を追加で支払う旨。2024年4月改正では明示項目がさらに拡大された。

出典: 厚生労働省 職業安定法改正ポイント/労働条件明示指針(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001370511.pdf, 閲覧日2026-08-22)
記載例は「月給28万〜35万円(固定残業20時間分/35,000円含む)、超過分別途支給」。内訳がない求人は基本給が最低賃金を下回る可能性すらある。「基本給÷所定労働時間」の時給換算を地域の最低賃金と比較したい。2025年度改定後の全国加重平均は1121円で47都道府県すべて1000円超、最高は東京都1226円である。

出典: 厚生労働省 令和7年度地域別最低賃金改定(https://edenred.jp/article/hr-recruiting/337/, 閲覧日2026-08-22)
最低賃金の推移

逆算検証で割増単価をチェックする

固定残業代の適正額は計算式で検証できる。残業単価=基本給÷月平均所定労働時間×1.25であり、これに固定残業時間を掛けた額が法定水準となる。月給30万円(うち固定残業代5万円・30時間分)、所定160時間の場合、基本給25万円÷160時間=1562.5円、法定の残業単価は1953円。一方実際に支払われているのは5万円÷30時間=約1667円で、差額約286円×30時間=約8580円が毎月不足している計算になる。

出典: エムステップ周南「固定残業代とは?仕組みや計算方法」(https://m-step.work/shunan/column/fixed-overtime-pay-guide/, 閲覧日2026-08-22)
残業単価の検証結果 深夜労働(22時〜5時)はさらに25%、法定休日労働は35%の割増が上乗せ対象で、早退や有給取得日でも固定残業代は満額支払うべきである。求人票の数字を見たら、まず基本給を引き出してこの式に当てはめる習慣をつけたい。

違法になる4つのパターンと判例基準

第一に明確区分性の欠如。最高裁平成24年3月8日のテックジャパン事件は、通常賃金部分と割増賃金部分を判別できることが必要と判示した。第二に判別不能な年俸制。医療法人康心会事件(最高裁平成29年7月7日)は年俸1700万円という高額給与でも、割増相当部分の明示がなければ残業代支払いを免れないとした。第三に最低賃金割れ。第四に45時間超の設定。36協定の原則上限は月45時間で、83時間のみなし設定を無効とした裁判例もある。

出典: 最高裁判決解説 広島メープル法律事務所/社会保険労務士法人第一綜合事務所コラム(https://www.sr-dsg.or.jp/column/payroll/1375/, 閲覧日2026-08-22)
無効と判断された場合の企業側リスクは大きい。支払済み手当が割増賃金の計算基礎に組み入れられて単価が跳ね上がるほか、未払い分の消滅時効は2020年4月の改正で2年から3年に延長されたため最長3年分の遡及請求が可能で、裁判になれば同額の付加金も加算されうる。2007年度には労基署指導による100万円以上の遡及支払企業が1728社で過去最多、総額272億円に達した。労働者側から見れば、退職後3年以内なら請求権が残るということでもある。

出典: 弁護士法人勝浦総合法律事務所「労働基準法改正で残業代はどうなる?時効3年」(https://katsuura-law.com/zangyo-dai/0103.html, 閲覧日2026-08-22)
なお固定残業時間自体の目安として、30時間未満かつ実態残業も少なければ保険的運用のホワイト企業寄り、40〜45時間は長時間労働前提のリスク高い設計、45時間超は違法性が疑われると整理できる。

まとめ

固定残業代は違法な制度ではなく、明示3項目と法定単価を満たせば収入安定に資する仕組みである。ただし都調査では基本給込みが残業代不足理由の首位を占め、判例は高額年俸でも区分性を要求している。読む際は「基本給の額」「時間数」「超過分別途」の3点確認と、残業単価の逆算検証を必ず行うことが、手取りを守る最短ルートになる。

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