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退職金の相場と企業規模差はどこまで開くか|最新統計で検証する

公開日
2026年7月27日
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退職金年収データ統計リテラシー
この記事のまとめ

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』では、大卒・勤続20年以上の定年退職者の平均退職給付額は1896万円であり、企業規模別では1000人以上2191万円に対し30〜99人1282万円と約900万円の差がつく。制度を持たない企業は24.8%に達し、大企業モデル2858万円と中小モデル1149.5万円という公的統計間の乖離も、読み方を誤ると過大または過小評価につながる。

目次

  1. 全体平均1896万円とその内訳
  2. 企業規模差が生む1000万円超の格差
  3. 制度の有無と形態が分ける分水嶺
  4. 減少傾向に抗う個人の準備戦略
  5. まとめ

全体平均1896万円とその内訳

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者1人当たり平均退職給付額は1896万円である。支給形態別では退職一時金のみ1678万円、年金併用2357万円と、年金を併設する企業の方が700万円程度高く、退職理由別では定年1896万円に対し自己都合1441万円と約450万円の減額が生じる。

出典: 厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』結果の概況 p.1〜4(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/index.html, 閲覧日2026-08-22)
この平均には重要な留保がある。集計対象は「退職金制度がある企業」に限られ、制度を持たない企業で働いた人はゼロ円として含まれない点である。また中央労働委員会『令和5年賃金事情等総合調査』の大企業(資本金5億円以上かつ従業員1000人以上)モデルでは大卒定年2858万円となり、東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情』の大卒1149万5000円とは1700万円以上開く。「相場」という言葉はどの統計かを確認してから使う必要がある。

出典対象大卒定年
就労条件総合調査全国・実支給額1896万円
中央労働委員会調査大企業・モデル値2858万円
東京都中小企業調査都内中小・モデル値1149.5万円

企業規模別の退職給付額

企業規模差が生む1000万円超の格差

就労条件総合調査を企業規模別に分解すると、1000人以上2191万円、300〜999人1662万円、100〜299人1347万円、30〜99人1282万円となる。制度の導入率も1000人以上90.1%に対し30〜99人は70.1%であり、規模が大きいほど「制度があり、しかも金額が高い」二重の有利さが存在する。

出典: 厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』退職給付の支給実態 p.1(https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/caripedia/26/, 閲覧日2026-08-22)
制度の中身も規模で分かれる。経団連・東京経営者協会『2021年退職金・年金に関する実態調査』では、回答企業(72.5%が従業員500人以上)の標準者退職金は大卒38年勤続2243万3000円、確定拠出年金採用率71.2%、算定方式ではポイント方式76.7%と資格・職務要素中心の設計が主流である。一方、中小企業では中退共(加入事業所55.7万所・被共済者570万人)と社内一時金が柱であり、掛金月額の平均は9704円にとどまる。

出典: 日本経済団体連合会・東京経営者協会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査』p.1〜4(https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/026.pdf, 閲覧日2026-08-22)
参考として公務員を見ると、国家公務員の定年退職手当平均は2160万1000円だが、自己都合退職では345万4000円まで落ちる。退職金額の長期推移

制度の有無と形態が分ける分水嶺

退職金は法定福利ではなく、制度がない企業は24.8%に達する。業種別では宿泊・飲食サービス業の57.8%が制度なしで最多であり、サービス業全般で導入率が低い。専門家知見としてJILPT『60代の雇用・生活調査』は高齢期の就業理由の首位が「経済上の理由」76.4%であることを示しており、退職金と企業年金の有無が老後の労働選択を直接左右する構造を裏付ける。

出典: 労働政策研究・研修機構(JILPT)『60代の雇用・生活調査』調査シリーズNo.199 p.1(https://www.nissay.co.jp/hojin/keiyaku/fukuri/joho/fukurikoseireport/koyokadai.pdf, 閲覧日2026-08-22)
税制面の変化にも注意が要る。令和7年度税制改正により、iDeCo等のDC一時金を受け取った後に退職金を受ける場合の控除調整期間が5年から10年に延長された(2026年1月以降受取分から適用)。受け取り順序と時期次第で手取りが数十万円変わるため、60歳前後の資金計画では事前シミュレーションが必須である。

出典: auカブコム証券 iDeCo解説「退職所得が増税に?5年ルールが10年ルールに」p.1(https://ideco.kddi-am.com/learn/column/ideco0111, 閲覧日2026-08-22)
退職理由別の退職金

減少傾向に抗う個人の準備戦略

平均額の長期推移は右肩下がりである。2003年2499万円→2008年2323万円→2018年1983万円→2023年1896万円と、20年でおよそ600万円縮小した。背景は賃金体系の成果主義化、ポイント制移行、そして雇用流動化による勤続短縮である。転職回数が増えるほど後払い型報酬の取りこぼしが拡大する構造にある。

個人側の対処は3段階で整理できる。(1)現職の退職金規程と企業型DC残高を確認し、自己都合係数込みの見込み額を試算する。(2)不足分をiDeCoやNISAで補う設計を行い、受取時期を10年ルールに合わせて配置する。(3)転職時は求人票だけでなく中退共やDB・DCの有無、ポータビリティを待遇比較の項目に入れる。企業側の動きとしては、企業型DC加入者が約830万人へ拡大しており、持ち運べる退職給付への移行が進んでいる。

まとめ

退職金の相場は「大卒定年平均1896万円」という一点ではなく、制度の有無、企業規模、退職理由、受取時期の4つの条件で大きく変わる分布である。大企業モデル2858万円と中小モデル1149.5万円という公的統計間の差は、キャリアのどこに身を置くかの重要性をそのまま示している。平均に頼らず、自分の規程と積立状況から見込み額を出すことが第一歩になる。

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